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「ある鎮咳・去痰剤(N)のニコチン含有状況から見た安全性の問題」 |
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第60回日本公衆衛生学会(香川県・高松市) 2001年11月1日(木) 一般演題(示説) 第15分科会 食品衛生・薬事衛生 演題番号P15-9 田中英夫 大阪府立成人病センター調査部 野上浩志 大阪府立公衆衛生研究所 中川秀和 公立周桑病院 蓮尾聖子 大阪府立成人病センター調査部 |
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[目的] 全国の薬局、薬店で喫煙者の鎮咳、去痰剤として販売されている薬用吸煙剤(以下、Nとする)の安全性を、ニコチン含有量および使用者の尿中コチニン量等から評価検討する。 [方法1:製品中のニコチン含有量測定] Nおよび、コントロールとしてマイルドセブンエクストラライト、マイルドセブンスーパーライト、セブンスターの葉0.25g(製品3cm:実際の1本当たりの消費量)を蒸留水10mlで5分間振とうし、遠心分離後に抽出液を発色反応させ、高速液体クロマトグラフィーで分析した(表1)。 [方法2:ニコチンの体内への移行と消退] 喫煙者1名に被検者になってもらい、禁煙時、N使用時および禁煙継続かつN不使用時の3点で尿中ニコチンおよびコチニン量を分析した(ケース1)。ベースラインデータ、N使用本数等は自記式問診票で把握した。 [方法3:連用者における尿中ニコチン、コチニン濃度] 製品Nの連用者2名について測定を行った(ケース2,3)。ケース3についてはNの使用を中断してもらい、中断から96時間後に再測定した。 [考察と結論] 製品Nにはタバコの5分の1程度のニコチンが含まれていること(結果1)、使用によって製品中のニコチンが体内に移行し(ケース1)、中止によって消退すること(ケース1,3)、中止によってニコチン離脱症状を生じ(ケース3)、連用を生じさせることが(ケース2,3)、がわかった。 この一般用医薬品の安全性に対する追試と、これに基づく製造業者への適切な対応が必要と考える。 [結果1] 表1 製品0.25g中のニコチン含有量
[追加] 表2 タール含有量の比較
測定法:平成元年大蔵省告示第174号に示された方法に準じた。各々1箱から10本取り出し、各3cmずつ燃焼吸引して濾紙フィルターに吸着させ、重量測定し、これを10で割って1本(3cm)あたりのタール重量とした。これを各々2箱ずつ行った(サンプルA,B) [ケース1] 32歳 男性 医師 現病歴、既往歴に特記事項なし。喫煙中のニコチン依存度(FTND):3点 調査期間中の受動喫煙はなし。禁煙開始から3回目の採尿までの間、能動喫煙はなし。調査協力のため今回初めて薬用吸煙剤(N)を吸った。2回目から3回目の採尿までの間にニコチン離脱症状は現れなかった。 尿中喫煙関連物質測定結果(2検体づつ)
[ケース2] 53歳 男性 運転手 既往歴:喉頭部良性腫瘍。喫煙当時のニコチン依存度(FTND):6点 タバコの代替物として薬用吸煙剤(N)を約2年間連用。採尿前の1週間の1日平均薬用吸煙剤(N)使用本数:40本。採尿前1週間の能動喫煙、受動喫煙はなし。 尿中喫煙関連物質測定結果(2検体づつ)
[ケース3] 75歳 女性 無職 現病歴:糖尿病にて経口糖尿病薬を服用中。喫煙当時のニコチン依存度(FTND):7点 鎮咳目的で薬局から薬用吸煙剤(N)を勧められ、使用しているうちに、タバコから薬用吸煙剤(N)に置換し、連用していた。採尿までの連用期間は約3ヶ月。1回目の採尿日の6日前と7日前(2001.6.24と6.25)は、薬用吸煙剤(N)が手元になくなったため、セブンスターを25本づつ吸った。5日前からは再び薬用吸煙剤(N)のみの使用となった。1回目の採尿日から2回目の採尿日までの間に能動喫煙はなし。 受動喫煙の有無は明らかではない。薬用吸煙剤(N)中止3日目(2001.7.4)にニコチン離脱症状と思われる強いイライラ感が出現した。 尿中喫煙関連物質測定結果(2検体づつ)
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